-ヘッドハンティングというのは言葉からすると”頭狩り”で、ちょっと怖いイメージがあると思うのですが(笑)、基本的には企業が必要とするヘッド、ビジネスのリーダーをですね、待っているのではなくて、こちらからとりに行く、という動きをする時に、「とりに行く」アクションを行うエージェント(代理人)というのが僕らの仕事ですね。
具体的には、最近のことで言いますと、ドコモにいた津田さんというNTTの技術畑にいらっしゃった方を、トップという地位でヘッドハンティングをして、ボーダフォンに移っていただいたり、あるいは通信業界が多いのですが、ダイエーの樋口さんは以前、日本ヒューレットパッカードにいらっしゃった方であるとかといった事例があり、ここ数年日本でも一気にヘッドハンティングで移っていくということが浸透してきました。
今言った様なことは新聞に載るくらいの大きな出来事ですけれど、僕らがやっているのは必ずしもそういったトップクラスのことだけではなく、30代40代のいわゆる脂が乗り切ったようなビジネスマンで、他の会社でどうしても必要とされる能力を持った人にこちらから声をかけていき、転職していただくというのが、我々の言っているヘッドハンティングですね。
-まず、コミュニケーション能力ですね。第一印象にその人の人柄がにじみ出てきますから。僕らがヘッドハンティングをしない人たちは、例えば人と話しているときに目を見てくれないとか、挙動が不審であるとか(笑)。その人がどういう人なのかというのは、その人を見れば3分で分かります。次に話しをしてみて、その人が考えている地点がどこまで深いのかということを確認します。仕事において何を重視するのか、人生の中で何に重きを置くのか。そういうのは、世の中をどうみているのか、自分をどう位置づけているのかということを知るベースになってきます。例えば、実務家として仕事ができても、見る視点が単に仕事をこなすだけというものだと、僕らが要求されるような「組織のトップ」であるとか「経営幹部」のようなところには向かないのかなと思います。
これは年齢は関係がなく、20代の人であっても、すごく高い地点で自分の仕事や業務を見ている人もいれば、かたや50代であっても、大企業の一部という意識でしか働いてこなくて、人間に深みがないという人もいて。そこは先程言った様に、最初のコミュニケーション能力で分かります。その中で、外資系で働く方が向いている人と、日本の企業で働く方がいい人というのは明確に表れてくる。どちらが良い悪いではないのですが、それぞれのメリット・デメリットはありますからね。例えば「自分を客観視できない人」とか「周りの人に気を使いすぎちゃう人」あるいは「達成思考が弱い人(自分が達成することよりも、仲間との協調を重視しすぎるタイプ)」というのは外資系企業に向かないですね。これは英語ができるできないとかいったスキル以前のスタイル・価値観としてなのですが。
-そうですね。また企業は、TOEICの点数だけではなく、英語をビジネスの現場で使ったことがあるという経験を非常に重要視します。いくら日常会話でブロークンな形での英語のコミュニケーションができたとしても、実際のビジネスの現場でどの程度ネゴシエーション(交渉)ができるか、またはディスカッションができるか。これは結構企業が重要視するポイントですね。また、ドキュメンテーション(文章にする)というポイントも非常に重要です。というのは、「話すこと」と「読むこと」というのは日本人にとって結構簡単なことで、むしろ「自ら文章にする」能力が求められる。
日本のビジネスシーンでも、ビジネス書式がありますよね。日本語でもビジネス文書が書ける人と書けない人がいるというのに、これが外資系企業では英語のビジネス文書になってくる。これがブロークンな形だとE-mailというものがありますよね。メールだと、多少文章が崩れていても大した問題ではないのですよ。でもこれが例えば対外向けの文書のチェックであるというレベルまで求めてくるというのであると、これまた相当上のレベルの英語が必要になってくる。そういう意味で、ビジネスでの経験が問われてくる。また最近ではテレフォンカンファレンス(電話会議)も外資系企業では盛んに行われるようになってきている。
その時求められるのは、英語力もさることながら、先程言ったように、人物像になってしまいますけどね。一方で最近では外資系企業だけではなく、日本の企業も英語力を求め始めています。その理由としては、外資系のファンドがいつの間にか自分の会社の株を買い始めているから。何が起こっているのかというと、経済社会がボーダレスになってきているのですね。今までのボーダレスっていうのは、日本企業が中国に出て行く、アメリカに出て行くということだったのですけれど、そもそも企業の持ち主が代わるということが起きてきている。例えばよく挙げられるのは自動車業界ですね。
今やトヨタ、ホンダ以外は全部外資系企業の傘下になっていることから考えると、日本の大企業において、いつ持ち主が代わり、社内のオペレーションや日常のアクティビティー、ルールが変わるのか分からなくなってきている。今までの日本の企業の考え方は、日本を中心として、一部外国へ出て行くという話だったのですが、今後ガラッと会社そのものが変わってしまうということを考えると、いつ、そのようなことが起きてもいいよう、リスクに備えるための英語力というのは持っていた方が良いし、逆にヘッドハンターに求めるニーズとしても「やっぱり英語は話せないとね」ということになってくる。
-まさにおっしゃるとおりでして、僕らのヘッドハンティング業界も、そこにすごく注目しています。そもそも10年前の1995年からの話で言いますと、ヘッドハンティングを使うのは99%が外資系企業でしかなかった。例えばマイクロソフトが日本支社の支社長を選ぶときには、日本のNECで海外の経験が長くてアイディアマンであり実力のある人をとってくるという話になっていたわけです。しかし今起こっていることは、日本企業そのものをヘッドハンティングしようとしていること。それも、トップクラスだけではなくて、年齢は関係なくデキル人が欲しいという傾向になってきているわけですよ。今は20代後半あたりからどんどんヘッドハンティングされて、年収もステップアップしている例も増えてきているわけですし。増して今インターネットビジネス市場と言うのは急拡大しているわけですよね。これは「広告」とかだけじゃなくて、「イーコマース」というのもそうですし、リアルビジネスにどんどんインターネットが入ってきている。
では、その「インターネットビジネス」が分かっているのは何歳くらいなのかといったら、やはり20代から30代が中心になっているわけですよ。そういう意味で言いますと、本当にデキル若い人材はどんどんヘッドハンティングされてきています。例えばインターネットのセキュリティー分野での話ですけれど、ハッカーをヘッドハンティングしたいという例もありました。しかしハッカーなんて、今までは人づてでしかどこにいるのかなんて分からなかった。
だから人が欲しいという時には、今までは人づて、主に同業界内ででしか探せなかったのですが、予想もしなかったところに適材がいるということを皆分かり始めてきて、それを発掘してくるのがヘッドハンター、あるいはヘッドハンティングというソリューションであると思うし、僕らに対するオーダーも多様になってきていて、マーケットはどんどん広がる一方です。
-今までは、海外といったらアメリカ・ヨーロッパが中心だった。でも第三世界がどんどんマーケットをオープンしていった結果、日本だけではなく、例えば中国のマーケットから、或いはインドのマーケットからヘッドハンティングの依頼を受けることも増えてきています。そういったことにより、オポチュニティー(機会)が広がり、ビジネスマンの持てるオプションがどんどん多くなってきている。だから、どこからオーダーがくるか分からないのですよ。中国かもしれないし、インドかもしれないし、日本の外資系だったりする。そこで、日本語しかできないっていうことになると、いっきにその選択肢は狭まってしまう。「あ、私はここまでしか対応できないのだ・・・」というね。でも英語ができると、どこからくるオーダーに対してでも自分はフリーハンドでそれを掴み取るチャンスがある。
ヘッドハンティングされる瞬間に、ヘッドハンターは「英語葉話せますか?」って聞くわけですよ。そこで、「全然話せません」ということだと、ハンターがその時持ってきた情報の半分以上が「この人に言っても仕方がない」と判断されて切り捨てられるわけです。しかしここで、「英語はできますよ」という回答であったならば、その瞬間話がいっきに広がって、ハンターから「こんな話もあります、あんな話もあります」ということになるのです。ヘッドハンターと会ったその瞬間の、英語ができるかできないかというそのジャッジメントだけで、あなたが受け取れる情報の量・質ともに大きく変わってくる。つまり、まとめると、ヘッドハンティングという市場がどんどん広がっていく中で、これからヘッドハンターと会う機会も増えてくる。その時、英語ができる・できないという判断だけで、そのヘッドハンターがあなたに与える情報の内容が変わってくるというわけです。
-まず初めにに、外資系企業が優秀な人材を欲しがり、優秀な人材が自分の能力に見合った報酬をくれる企業で働きたいというニーズがマッチしました。その後、日本企業が自分の会社には優秀な人材がいなくなってしまったということに気がつき、それなら自分たちも外に人材をとりに行くしかないという状況になってきた。日本の企業も、外資系企業で経験を積んだ人材がほしい。これが現在の動きです。こうなってくると今度は、日本のマーケット全体が人材争奪合戦に名乗りを挙げるという状況になるので、ヘッドハンティングの需要が増えてきている。もう一つは、派遣ということも含めて考えると、ワークスタイルが多様化してきたことが挙げられます。
今までのワークスタイルは、男が新卒で会社に入り定年になるまで働くという、戦後にできた年功序列にのっとっていた。ところがいまやその神話も崩れ、結婚する年齢が遅くなり、子供も生まない人も増え、女性も結婚したからといって仕事をやめるわけではなくなっている。自分が何をしたいか、どう生きたいかということを含め、自分のワークスタイルをチョイスできるようになっている。そうなると、企業側も個人の側の意識の変化に応じて、人材の調達・能力の調達方法を考え直さなければならなくなっている。正社員だけじゃなくて派遣社員も活用しなければならない。つまり、企業の側と個人の側、両方の側面から起こった変化が、我々のようなヘッドハンティングや派遣とか、いわゆる人材ビジネスのニーズを高めた要因であると思います。